有料老人ホームの費用相場
入居一時金
入居一時金とは、一定期間分の家賃を入居時に一括で支払うお金のことです。
施設の種類 | 費用相場 |
---|---|
介護付き有料老人ホーム | 30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 5.5万円 |
健康型有料老人ホーム | 0~1億円 |
※健康型有料老人ホームは施設によって費用差があるため、概算した金額を記載
同じ有料老人ホームでも、施設種ごとの人員配置や受けられるサービス、設備によって費用差が生じています。
例えば、介護付き有料老人ホームでは要介護度5や看取りに対応できるよう、人員を多く設けているため、同じ有料老人ホームでも費用に違いがあります。
月額利用料
月額利用料とは毎月施設側に支払っていくお金のことで、食費や管理費、介護保険サービス費(自己負担分)などが含まれます。
以下の表は、有料老人ホームに分類される3つの施設の月額利用料(相場)をまとめたものになります。
施設の種類 | 費用相場 |
---|---|
介護付き有料老人ホーム | 15.7~28.6万円 |
住宅型有料老人ホーム | 9.6~16.3万円 |
健康型有料老人ホーム | 12~40万円 |
充実したサービスの提供に比例して、金額も変動します。
有料老人ホームの入居一時金
入居一時金は、平均余命などを参考に一定の入居者が住み続けるであろう「想定居住期間」を設定し、その期間の賃料や介護費などを前払いする仕組みを償却と言います。
多くの施設では、入居一時金の30%程度を「初期償却」として扱い、残額を一定の期間内で償却しています。
初期費用については、老人福祉法によって以下の4つが義務付けられています。
・算定の根拠
・短期解約特例
・返還金の計算式の明示
・返還金の保全
入居一時金の償却
入居一時金は、入居時に一定割合が償却され(初期償却)、その後は想定居住期間内に毎月均等に償却されます。
もしも償却期間内に入居者が途中退居した場合(死亡時も含む)、未償却分が返還されます(返還金)。
なお、施設によって初期償却率や償却期間が異なるため、同じ期間で退去したとしても返還金の額が変わるので注意しましょう。
なお、初期償却がない場合の償却方法は下記の通りです。
・入居一時金をすべて毎月均等に償却
・入居期間に応じて入居一時金を月数で割った額を毎月契約した月に償却
・年単位で段階ごとに償却
退去する時に入居一時金を使い切っていない場合は、未償却の残高が返還されます。
<クーリングオフ(短期解約特例)とは>
返還金の金額の算定方法について「3ヵ月日ルール」と呼ばれるものがあります。
入居者が何らかの理由により入居後3ヵ月以内に施設を退去した場合、施設は初期費用(前払金や入居一時金)を返還する必要があります。
ただし、それまでの利用料と原状復帰の費用などが引かれるため、全額返還されるわけでなく、日割り計算で返還金が計算されることになります。
入居一時金のメリット・デメリット
入居一時金 | メリット | デメリット |
---|---|---|
あり | 月額利用料が安くなる | ・入居時に資金が必要 ・返還金を巡るトラブルが考えられる |
なし | 入居時の資金が少ない | 月額利用料が高い |
入居時にまとまった費用が必要となる一方で、毎月の家賃が相場よりも安くおさえられる点はメリットと言えるでしょう。
入居一時金は家賃の前払いすることでなります。この点は、入居一時金のメリットと言えるでしょう。
一方、デメリットとして大きいのは、入居時に支払う金額が大きくなりやすい点や、返還金の扱いについて施設側とのトラブルが想定されます。
トラブルに発展しないためにも、入居時にしっかりと返還金について把握しておきましょう。
入居一時金が0円の施設もある?
ここまでは入居一時金がある前提で紹介していきましたが、施設によっては入居一時金が0円の施設も多く存在しています。
また、賃料を前払方式で取らない方法を選択することのできる施設が多くなっています(このような施設でも敷金が必要となる場合もあります)。
初期費用0円の施設にはデメリットがあり、一般的に「初期費用は居住する一定期間内の賃料などを前払いする」という性質のものなので、代わりに月額利用料がほかよりも高くなる傾向にあります。
どちらの施設を選んでも費用は変わらないのかというと、入居期間が一時的な場合、あるいは初期費用を抑えたい方にとっては、初期費用0円の施設は有効な選択肢となります。
有料老人ホームの権利形態
まず、老人ホームの権利形態には次の3種類があります。
・利用権方式
・建物賃貸借方式
・終身建物賃貸借方式
利用権方式
入居一時金を支払うことで、施設内にある居室と共有スペースを利用する権利と、施設で提供される各種サービスを受ける権利を得ることができます。
介護付き有料老人ホームでは約8割の施設が利用権方式です。介護・生活支援などのサービスが一体化・パッケージ化されていて、終身利用できる点が大きな特徴。追加で費用がかかることも少ないです。
建物賃貸借方式
賃貸物件と同様に、有料老人ホームの家賃にあたる額を毎月負担することで居住権を得ることができます。
利用権方式との違いは、居住部分の契約と介護などのサービス部分の契約が別々である点です。
介護サービスを利用する場合は、入居者は自分で外部のサービス提供事業者と契約する必要があります。
なお、入居者が亡くなった場合でも、家賃を支払っている限りは居住権の維持が可能です。
終身建物賃貸借方式
基本的に建物賃貸借方式と同じですが、違うのは利用者が亡くなった場合に契約が終了する点です。なお、終身まで契約でき、その場合は契約更新料の支払いが発生しません。
なお、終身建物賃貸借方式を採用できるのは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づいて、都道府県知事から認可を受けている施設のみです。
有料老人ホームの利用料の支払い方法
有料老人ホームの利用料の支払い方法は4つのタイプがあるので、利用する老人ホームがどの支払い方法なのかを確認しておくことが大切です。
・全額前払い式
・入居一時金で一部前払い式
・月払い式
・選択式
全額前払い式
全額前払い式とは、入居中に発生する家賃費用を入居時に全額支払う方式のことです。
全額前払い式では、想定される居住期間を決め、その間に発生する家賃額をまとめて支払います。
入居時に家賃を支払うので、毎月発生する費用は家賃以外の食費や管理費のみです。
入居一時金で一部前払い式
想定される居住期間の家賃合計額の一部について、入居時に前払いする方式です。
全額前払い方式よりも入居時に支払うお金は少なくて済みますが、毎月一定額の家賃の支払いが発生します。家賃の一部は入居一時金として支払っているので、本来の家賃よりも安いです。
月払い式
月払い式は、入居時に家賃の前払いを一切行わず、本来の家賃を毎月支払っていく方式です。
入居時にまとまったお金を用意する必要がないので、入居時のハードルは下がります。
しかし毎月発生する家賃が大きくなるので、経済的な理由により、施設利用の継続が難しくなる可能性もあるため注意が必要です。
選択式
選択式は、全額前払い式・一部支払い式・月払い式の中から、好きな方式を選択できます。
入居目的に合わせて、上記で紹介した支払方法を自由に選ぶことができます。
有料老人ホームの月額利用料の内訳
毎月かかる費目一覧
まずはじめに、毎月の利用料に含まれる費用項目は主に以下の通りです。
・賃料
・管理費・水道光熱費
・食費
・その他の費用
・上乗せ介護費
・横出しサービス費
賃料
家賃は施設の立地場所や入居する部屋タイプ、設備の充実度によって変わってきます。
費用差がうまれる一番の要因は地価です。
都市部など地価の高い地域だと賃料は高くなる一方で、郊外地域では賃料は安めです。
管理費・水道光熱費
施設を管理・維持するためにかかる費用です。
平均1万円前後の施設が多いですが、充実した設備を兼ね備えている施設では平均よりも高く設定されているケースもあります。
また施設によっては、管理費に水道光熱費や電話代が含まれている場合もあるので、契約時に確認しておきましょう。
食費
1日3食にかかる飲食代です。
施設によってはおやつ代を別途請求するケースもあるので、食費の内訳についても確認が必要です。
その他の費用
有料老人ホームでは、月額利用料のほかに、以下のような雑費がかかります。
・歯ブラシや石鹸、おむつといった日用品
・嗜好品にかかる日常生活費
・レクリエーション参加費
・理美容代
・医療費
・介護保険外のサービスの利用料
上記はあくまで一例です。
必要となる雑費は、入居される方の生活により変動するので、どのくらいかかるのか、およその金額を計算しておくと安心です。
上乗せ介護費
有料老人ホームによっては、介護ケアをよりきめ細やかに提供するために、介護保険制度で定められた「要介護者3人に対して1人の介護職員」よりも、手厚い人員配置をしている施設があります。
このようなサービスを受けるために発生するのが「上乗せ介護サービス(上乗せ介護費)」です。
施設が上乗せ介護費を支払うべき施設かどうかを確認する方法は、施設情報や運営規定などから確認できます。
例えば、「2.5:1」「2:1」「1.5:1」などと表記されているケースが該当します。
横出しサービス費
横出しサービスとは、「買い物代行」「規定回数以上の通院付き添い」など、利用する方にとっては必要とされているものの、介護保険の対象外となっているサービスのことです。
横出しサービスは利用者の全額負担になるため、どのようなサービスが該当するのかは施設側が情報を開示しています。
介護保険サービス費
要支援・要介護認定を受けている方で、介護保険サービスを利用した場合、介護サービス費の支払いが必要です。
介護付き有料老人ホームの場合、「特定施設入居者生活介護(特定施設)」に相当します。特定施設の介護サービス費は要介護度に応じて毎月定額となっています。
住宅型有料老人ホームであれば、自宅で利用する場合と同じく、訪問介護や通所介護などを利用した分だけの支払いです。
1ヵ月あたりの自己負担額(目安)
介護付き有料老人ホームに入居した場合、毎月かかる介護サービス費(特定施設入居者生活介護)は以下の通りです。
限度額(単位) | 自己負担額(30日) | |
---|---|---|
要支援1 | 5,032 | 5,032円 |
要支援2 | 1万531 | 1万531円 |
要介護1 | 1万6,355 | 1万6,355円 |
要介護2 | 1万8,362 | 1万8,362円 |
要介護3 | 2万490 | 2万490円 |
要介護4 | 2万2,435 | 2万2,435円 |
要介護5 | 2万4,533 | 2万4,533円 |
※1単位―10円、自己負担割合1割の場合
介護度が高くなる分だけ、自己負担額も増加します。
また、必要な介護サービスの提供量に応じて、費用も高くなります。
なお、介護付き有料老人ホームであっても、入居時自立型の施設で要介護認定を受けていない場合は介護サービス費は発生しません。
介護保険の適用対象について
有料老人ホームで受けるサービスには、介護保険の適用となるサービスと、適用にならないサービスがあります。
<適用となるサービス>
・掃除や洗濯などの生活援助
・食事介助
・排せつ介助
・入浴介助
上記項目の特徴として、基本的な身体介護については、介護保険適用内のサービスとなります。
<適用外となるサービス>
・趣味を目的とした外出の介助
・買い物の代行
・金銭の管理
・契約書などの書類作成支援
・来客に対するお茶や菓子、食事サービス
・床のワックスがけなど普段行わない大掃除
基本的に、本人が生活上必要とするケアに関わりのない支援は介護保険適用外です。
介護付きと住宅型から自分に合った施設を選ぶ方法
はじめに、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違いを確認していきます。
施設種別 | 入居一時金 | 月額利用料 |
---|---|---|
介護付き有料老人ホーム | 30万円 | 19.7万円 |
住宅型有料老人ホーム | 5.5万円 | 12.1万円 |
中央値とは:データを大きい順・小さい順に並べたときに、中央に来る値です。平均値のように、極端な値の影響を受けにくいという特徴があります。
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームで金額に大きな差がある理由は、介護付き有料老人ホームの場合は人員配置基準が厳格でそれに応じて手厚い介護サービスを受けられることから金額が高く設定されています。
住宅型有料老人ホームがおすすめな人
「住宅型有料老人ホーム」と「介護付き有料老人ホーム」のどちらを選ぶべきかを考える上で、1つ大きなポイントになるのが毎月かかる介護サービス費(自己負担額)の金額です。
「介護付き有料老人ホーム」で受ける介護サービスはすべて「特定施設入居者生活介護」となり、毎月定額でサービスを受けることができます。
一方、「住宅型有料老人ホーム」は、訪問介護や訪問看護などのサービスを利用した分のみ介護サービス費を支払います。
そのため、もし毎月かかる居宅介護サービス費が、特定施設入居者生活介護の定額を下回る場合は住宅型有料老人ホームがおすすめと言えます。
<住宅型有料老人ホームの介護サービス利用料>
住宅型有料老人ホーム入居する上で注意したいのが、介護スタッフが常駐していないことです。
介護サービスを受ける場合には、外部の業者と契約し、訪問介護やデイサービス(通所介護)、小規模多機能型居宅介護など、在宅介護のサービスを受ける必要があります。
以下は、在宅介護サービスを受ける場合の自己負担額をまとめた表です。
区分 | 自己負担額 |
---|---|
要支援1 | 5,032円 |
要支援2 | 1万531円 |
要介護1 | 1万6,765円 |
要介護2 | 1万9,705円 |
要介護3 | 2万7,048円 |
要介護4 | 3万938円 |
要介護5 | 3万6,217円 |
※1単位=10円で計算
※上記は30日あたりの額面となります
介護付き有料老人ホームがおすすめな人
介護付き有料老人ホームの場合は住宅型有料老人ホームとは反対に、居宅介護サービス費が、特定施設入居者生活介護の定額を上回る方におすすめと言えます。
例えば、介護度の高い方で頻繁に訪問介護、訪問看護などのサービスを利用される方は、どれだけ介護サービスを受けても介護サービス費が変わらない「介護付き有料老人ホーム」の方が、費用面で有利になりやすいです。