介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームとは

介護付き有料老人ホームとは有料老人ホームの1つで、行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設です。
食事や入浴、排泄など日常生活上の介護サービスのほか、レクリエーションや設備面などのサービスも充実しています。

費用相場
入居時費用 月額利用料
0円~1,380万円 14.5~29.8万円
入居条件
自立 要支援1~2 要介護1~2 要介護3~5 認知症 認知症重度 看取り 入居のしやすさ
特徴

食事・入居・排泄などの日常生活上の支援や機能訓練などの介護・看護ケアが充実している施設です。

<特徴は介護サービスや医療ケアの充実度>
介護付き有料老人ホームの特徴は、主に以下の3つです。

・入所対象者は「要介護者」であること
・施設によって費用やサービスの内容が異なる
・看取り可能な施設が多い

介護保険施設にあたる「特別養護老人ホーム(特養)」や「介護老人保健施設(老健)」と比べると、費用は割高ですが、その分、充実したサービス内容が魅力的なポイントです。

特定施設の指定を受けているため、介護保険サービスを毎月定額で利用できます。
そのため、月々の予算が立てやすいので安心です。

<特定施設とは>
介護付き有料老人ホームのように、都道府県から「特定施設入所者生活介護」の指定を受けた介護施設を「特定施設」と呼びます。
特定施設入居者生活介護とは、できる限り自立して毎日を過ごすため、特定施設の入居者に対して、食事・入浴・排泄など日常生活上の支援や、機能訓練などをサポートするサービスを指します。
特定施設入居者生活介護は、「特定施設」に入所している人が、生活に必要な介護サービスを介護保険制度の利用により受けられるよう整備されています。

介護サービスを利用する時に、「外部の介護サービス事業者を選んで契約する」という面倒な手間がかからないことが特徴です。

介護専用型・混合型・自立型の3種類がある

介護付き有料老人ホームには「介護専用型」「混合型」「自立型」の3種類があります。
それぞれ、入居条件や設備が異なるので、入居を検討する際には、タイプごとの違いを把握しておきましょう。
「介護専用型」「混合型」では24時間の介護サービスを受けることができ、費用もそれほど大きな違いはありません。

<介護専用型>
介護専用型の入居対象者は、要介護1以上の方に限定されています。
介護度が重度の方でも快適に過ごせるよう設計されているだけでなく、緊急時にも即座に対応できるのが特徴です。

<混合型>
混合型は、要介護認定を受けていない⽅でも⼊居可能です。
自立している方も、要支援・要介護の方でも入居が可能なので、一方は介護が必要で、もう一方は自立している夫婦でも、同時に入居することができます。

夫婦で要介護度が違う場合は「混合型」に入居すれば良いということになります。

また、自立の方が将来的に介護を必要とするようになったとしても、そのまま入居し続けることができます。
なお、認知症の方の入居にも対応しているのが一般的ですが、認知症のケアの詳細は、事前に確認しておくと良いでしょう。

<自立型>
自立型は、介護専用型や混合型と比較すると数が多くありません。
一般的に、居室をはじめとする設備面が充実していることが多く、費用が高い傾向にあります。

有料老人ホームの約6割が介護付き

有料老人ホームの種別割合

施設の種類 有料老人ホームの種別割合
介護付き有料老人ホーム 58.6%
住宅型有料老人ホーム 41.2%

有料老人ホームのうち、約6割が介護付き有料老人ホームが占めています。

介護付き有料老人ホームは、介護サービス費が定額で、24時間の介護体制も整っていることから、今後もニーズがさらに高まっていくと予想されます。
また、多くの民間事業者が運営しているということもあり、バリエーションに富むサービスや設備がある施設も増えています。

<施設数が多く、希望に合った施設を探すことができる>
介護付き有料老人ホームは施設数が多く、入居者を集めるため、施設によってさまざまなサービスを展開しています。
イベントやレクリエーションに力を入れた施設、カフェや温泉などの設備が充実した施設など、施設ごとで特色は違います。
だからこそ、自分が受けたいサービスや設備などに合った施設を探すことができます。

介護付き有料老人ホームの入居条件

原則として「65歳以上」が対象

介護付き有料老人ホームのタイプごとの入居条件を以下にまとめました。

介護付き有料老人ホームの入居条件

  介護専用型 混合型 自立型
入居対象者
(自立)
入居対象者
(要支援)
入居対象者
(要介護)
費用相場
(入居時費用)
0円~1,380万円 0円~1,380万円 0円~1,380万円
費用相場
(月額利用料)
14.5~29.8万円 14.5~29.8万円 14.5~29.8万円
付帯サービス
(食事)
付帯サービス
(緊急時の対応)
付帯サービス
(介護サービス)
長く住める家になるか

介護専用型は自立や要支援の方は入居できません。

原則として介護付き有料老人ホームは、介護保険のサービスを利用できる「65歳以上」の方が対象ですが、種類によって入居条件は異なります。
「介護専用型」は要介護1以上、「混合型」は自立生活を送れる方でも入居でき、要介護3以上が入居要件となっている、特別養護老人ホームよりは入居しやすくなっています。

<夫婦で入居する場合は「混合型」がおすすめ>
夫婦で介護付き有料老人ホームの入居を検討しているのであれば、混合型がおすすめです。
混合型は自立〜要介護を条件としているので、夫婦の要介護度が別々でも入居できます。
しかし、介護専用型は一方が要介護状態、もう一方が自立だと一緒の入居はできません。介護専用型の条件は要介護1以上で、自立の方は入居できないため注意が必要です。

認知症でも入居できる

介護付き有料老人ホームは原則として終身利用となっており、自立~要介護5まで幅広い介護度の入居者希望者を対象としています。
そのため、重度の認知症の方でも受け入れが可能です。
ただし、どのレベルまで受け入れ可能なのかは、施設によって異なります。

介護付き有料老人ホームの設備

居室

介護付き有料老人ホームの居室タイプは、ほとんどの施設で個室が採用されています。そのため、1人の時間を大切にしたい、プライバシーを確保したい方にとっては、全個室の介護付き有料老人ホームがおすすめです。
また、施設によっては2人でも入居可能な個室もあり、夫婦で同じ居室に入居をしたい方に選ばれています。

個室には浴室やトイレなど、設備が充実した施設もあります。
希望の設備が整っているかどうかは、事前に確認しておきましょう。

共有スペース

共有スペースには食堂や浴室、ロビーなどが完備されています。
居室に浴室を設けていることが多いですが、共有スペースの浴室には寝たきりの方でも入居可能な機械浴、特殊浴が備えられています。そのため、介護度が上がっても安心してお風呂を楽しめます。
また、館内にはスプリンクラーや手すり、スロープも設置され、安全面も考慮されています。ほかにも、図書館やプール、庭など、毎日の生活が楽しくなるような設備環境の整った施設もあります。

娯楽設備で老後を楽しく過ごせるのは魅力です。

介護付き有料老人ホームの人員配置

介護付き有料老人ホームでは、以下のような人員の配置が決められています。

・施設長(常勤の管理者)
・事務員
・生活相談員
・看護職員
・機能訓練指導員
・計画作成担当者
・栄養士
・調理員

介護職員

介護保険法により配置は、要支援2以上の高齢者3人に対して1人の介護職員または看護職員です。なかには、さらに手厚い基準にした施設もあります。
しかし、常勤換算で必ず24時間配置とは限らないので、注意が必要です。

看護職員

看護職員は、入居者30人までは1人以上(常勤換算)、入居者50人増すごとに1人追加されます。
看護職員は薬の管理(投薬・服薬)、バイタルチェック、吸引などの看護ケアを行います。

ケアマネージャー(介護支援専門員)

ケアマネージャーは、要介護認定を受けている入居者のために、介護サービスの利用計画である「ケアプラン」の立案を行う介護分野の専門家です。
各施設に1人以上配置するよう制度上定められています。

生活相談員

生活相談員(ソーシャルワーカー)は、入居者100人に対して1人以上の常勤の配置が決められています。
入居者本人とその家族から生活上の相談を受けるほか、行政上の手続きなども行なっています。

機能訓練指導員

介護付き有料老人ホームでは、機能訓練指導員を1人以上配置することが義務付けられています。

機能訓練指導員の保有資格は以下の通りです。

・理学療法士
・言語聴覚士
・作業療法士
・柔道整復師もしくはあん摩マッサージ指圧師
・看護師
・鍼灸師

機能訓練指導員は、入居者の身体状況に合わせたリハビリテーションを行うのが主な役割です。

栄養士(管理栄養士)

栄養士(管理栄養士)は、日々の食事における栄養バランスを考え、入居者の健康維持につながるメニューを考案するのが主な役割です。
食材の選定および管理も行なっています。

調理員

調理員は、栄養士が考えた献立表に基づいて、厨房で入居者の食事をつくるのが仕事です。
入居者の身体の状態に合わせた調理を行います。

施設長などの管理者

管理者は、施設を経営するうえでの責任者として、運営全体を担います。
高齢者の介護に関する知識と経験を持つ人を配置しなければなりません。

介護付き有料老人ホームのサービス

受けられるサービス一覧

介護付き有料老人ホームのサービス一覧

食事提供 掃除・洗濯 見守り・生活相談 買い物代行 食事介助
入浴介助 排泄介助 着替え介助 リハビリ レクリエーション

<介護付きで提供されるサービスの特徴>
介護付き有料老人ホームは「特定施設」の指定を受けているので、介護保険の範囲内で手厚いサービスを受けることができます。
日々の生活を送るための介護、生活援助、リハビリなど、多くのサービスを利用者の状態に合わせて提供してくれるので、安心した老後生活を送ることができます。

介護サービス

介護付き有料老人ホームでは、介護が必要な方に対し、食事や入浴、排泄、着替えなどの介助が行われます。

生活支援として、以下のサービスを利用できます。

・来訪者の受付
・掃除や洗濯などの日常生活のサポート
・買い物や行政手続きなどの代行サービス
・本人不在中の居室の管理
・入院中の洗濯物や必要品の購入やお届け

また、多くの施設で、日常生活やレクリエーションを通じて、機能訓練(リハビリ)などが行われています。
介護体制は、24時間体制が基本ですが、施設ごとに夜間の人員体制は異なります。
不測の事態に対応できる体制が整っているかどうか、事前にチェックしておきましょう。

福祉用具のレンタル

介護保険制度では車いすなど福祉用具を保険適用でレンタルが可能です。
しかし、介護付き有料老人ホームで福祉用具をレンタルできるかどうかは、その施設が提供している「特定施設入居者生活介護サービス」が「一般型」か「外部サービス利用型」かによって変わってきます。

福祉用具がレンタルできるかどうかは、施設に入居する前には必ずチェックしておきたいポイントです。

一般型の場合、入居者に提供される介護サービスはすべて施設の職員によって行われるのが原則です。そのため、福祉用具のレンタルで外部の事業者を利用することはできません。

居室内にトイレや浴室のある施設や、寝たきりの方でも入浴が可能な機械浴・特殊浴が備えられた施設もあるため、入居者だけでなくその家族にとっても安心です。

<外部サービス利用型は福祉用具のレンタルが可能>
一方、外部サービス利用型ではその名の通り外部のサービスを利用でき、福祉用具のレンタルも行うことができます。
ただし、利用できるのはその施設が委託している事業者に限るので、自分で事業者を選ぶことはできないので注意が必要です。

医療サービス

介護付き有料老人ホームではホーム内の健康管理サービスとして、検温、血圧や脈拍のチェック、服薬管理、褥瘡などの皮膚疾患、怪我などの医療行為が行われています。
法令で定められた職員配置基準では、看護師または准看護師の配置が義務付けられています。

<施設によっては夜中も医療サービスを受けることができる>
介護付き有料老人ホームでは、医師や看護師を24時間配置する義務は定められていないので、多くの場合は、医療機関ほどの手厚い体制にはなっていません。
ですが、有料老人ホームの設置運営標準指導指針に「協力医療機関」を定め、協力体制を整えることが義務付けられているので、夜間にまったく対応できないわけではありません。

万が一、看護師の勤務時間外に、急に具合が悪くなった場合は、看護師の呼び出しを行い、医療機関に搬送するなどの対応が取られています。
一部には医師を常駐させる、24時間の看護体制を整えるなど、基準以上の職員配置を行っている施設もありますよ。ただし、その分の費用が高くなる傾向があります。

費用、医療機関との連携体制や最寄りの病院までの距離などについては事前に確認しておくと安心です。

レクリエーション・リハビリ

介護付き有料老人ホームでは、レクリエーションやイベントも充実しています。
施設によって内容や頻度は異なりますが、誕生会や花見、小旅行などを行う老人ホームもあります。
さらに、囲碁、将棋、コーラス、ゲートボールといったサークル活動も盛んに行われ、入居前と変わらず、ほかの方との交流を持ち、自分らしい生活を送ることができるような環境が整えられています。

身体が不自由な方にとって、老後を豊かに過ごしていくためには「機能訓練(リハビリ)」が大切です。
機能維持を目的とし、現在の体力や機能を低下させないようなリハビリが行われます。

日常生活やレクリエーションを通じた歩行訓練、トレーニングを実施する施設が多く、専門スタッフや設備を整え、機能訓練を充実させた老人ホームも増えてきています。

<日常的に行う活動をリハビリと捉える「生活リハビリ」>
施設のなかには、日常的に行う活動をリハビリととらえる「生活リハビリ」を行う施設もあります。
生活リハビリを行うことで、筋力や体力の維持はもちろん、自立して生活する力を維持することが期待できます。
入居先を探すときは、見学や体験入居を通して、各施設で普段からどのようなレクリエーションが行われているのか確かめておくと良いでしょう。
また、リハビリ体制は、理学療法士や言語聴覚士といったリハビリ専門員の配置状況を事前にチェックしておくことも大切です。

食事

食事は入居者の健康を保つうえで重要となるだけでなく、日々の生活における楽しみのひとつです。
栄養バランスが整っており、年中行事に合わせて出される行事食や旬の素材を使ったメニューによって季節感を出し、入居者に楽しんでもらえるよう工夫を凝らしています。
嗜好に合わない食材は使わないようにするなど、入居者各人の好き嫌いにできるだけ対応してくれることが多くなっています。

<介護食にも対応してもらえる>
介護付き有料老人ホームでの食事は、入居者の嚥下や咀嚼状態に合わせた食事形態を用意しています。
食事をペースト状にしたミキサー食は飲む・噛むことが難しい方に対し、胃腸の負担を抑えつつ素早く栄養を吸収できる食事です。
その他に食事を細かく刻んだきざみ食、葛粉や片栗粉でとろみをつけたゼリー食・とろみ食などの介護食があります。
ほかにも、塩分制限やカロリー制限といった医療食も必要に応じて提供してくれます。

さらに、糖尿病や腎臓病の方向けの療養食もあり、その人に適した食事が用意されるので、充実した食事を楽しめます。

看取り体制

高齢の方を最期まで看取ることを「看取り介護」と言います。
介護付き有料老人ホームの看取り率は23.3%と、住宅型有料老人ホームの24.1%とほぼ同等です。
介護付き有料老人ホームの場合、2012年から「看取り加算」が追加されたので、看取り介護に積極的に取り組む施設が増えてきました。

看取りを行う介護療養型施設の割合

施設の種類 看取り率
介護付き有料老人ホーム 23.3%
住宅型有料老人ホーム 24.1%
サービス付き高齢者向け住宅 (特定施設) 18.2%
サービス付き高齢者向け住宅 (非特定施設) 17.8%

介護型と住宅型では、看取りの対応が多く行われています。

基本的に介護付き有料老人ホームは、終身利用が可能な施設です。
入居者や家族の意見を尊重して最期まで安らかに過ごせるようなケアを行うので、家族としても安心です。
施設の見学のときなどに、看取り体制を確認し、家族でも話し合っておくと良いでしょう。

介護付き有料老人ホームの費用

介護付き有料老人ホームへの入居に際しては、入居一時金と月額利用料が必要です。

入居一時金と月額利用料に関して以下にまとめました。

介護付き有料老人ホームの料金(中央値)

入居一時金 月額利用料
30万円 19.7万円

平均値とは:データの合計値をデータの個数で割った値です。極端に大きい値や小さい値の影響を受けやすいという特徴があります。
中央値とは:データを大きい順・小さい順に並べたときに、中央に来る値です。平均値のように、極端な値の影響を受けにくいという特徴があります。

介護付き有料老人ホームは手厚い人員体制が整えられている分、他の施設と比べて費用が高くなる傾向になります。
なお、介護サービス利用料は、要介護度に応じて定額で利用できます。

入居一時金

介護付き有料老人ホームでは初期費用に入居一時金が必要です。
入居一時金とは家賃の前払いにあたり、一定の入居期間を想定し、入居時に家賃をまとめて支払うことです。
家賃を一括で支払う、一部を支払うなどあるため、支払い方法ごとに初期費用は変わります。
また、入居一時金の費用は、施設によってさまざまです。なかには入居一時金が0円の施設もあり、初期費用を抑えたい方におすすめです。

月額利用料

月額利用料の計算方法は、「施設に支払うお金(賃料・食費・管理費など)」+「介護サービス費」+「その他日用品の費用」で求められます。

月額利用料の相場は19.7万円ほどです。具体的な項目は以下の通りです。

・居住費
・管理費
・食費
・医療費
・上乗せ介護費
・日用品の購入費
・理美容費、自費でのサービス利用費

介護サービス費は要介護を受けていない自立した方であれば、費用の負担はありません。
要介護認定を受けた方、介護認定が条件の介護専門型に入居している方は、要介護認定の段階に応じた費用を支払う必要があります。

介護付き有料老人ホームで受けられる控除の種類

介護費用や食費、居住費は、税金の控除を受けられる場合があります。
介護負担を減らすために、「扶養控除」「障害者控除」「医療費控除」などを利用できます。
また、訪問診療や通院などの医療費がかかる場合にも活用できる場合があります。

<扶養控除について>
有料老人ホームなど、介護施設に入居する前から入居者を扶養に入れて扶養控除を利用している方や、遠距離介護で親に仕送りをしている方の場合、扶養控除が施設入居後も受けられる可能性があります。

入居者が70歳以上なら老人扶養親族となり、施設入居の場合は48万円の控除が受けられます。

扶養控除を受ける方法
扶養控除を受けるためには、自営業なら確定申告時に、サラリーマンなら、勤務先に扶養控除申告書を提出することが必要です。

扶養控除一覧は以下の通りです。

扶養控除一覧

  区分 控除額
配偶者 一般の控除対象配偶者 38万円
配偶者 老人控除対象配偶者 48万円
親族 一般の控除対象扶養親族 38万円
親族 特定扶養親族 63万円
親族 老人扶養親族 (同居老親等以外) 48万円
親族 老人扶養親族 (同居老親等) 58万円

<障害者控除について>
もうひとつ、要介護認定を受けて介護付き有料老人ホームに入居する場合に受けられる可能性があるのが、障害者控除です。
要介護認定がそのまま障害者認定になるわけではありませんが、自治体ごとに一定の基準を設け、要介護認定を受けた方は障害者控除の対象として認定する方針を出しています。
要介護認定3以上の方を「特別障害者控除対象者」として認定する自治体も多くあります。
また、介護度が要介護度2以下の場合にも、障害者控除の対象として認定する自治体もあります。
特別障害者控除対象になると、40万円の控除が受けられます。

なお、特別障害者控除対象になると、納付する所得税額にも大きく反映されるので、まずはお住まいの自治体に問い合わせてみましょう。

障害者区分別の控除一覧は以下の通りです。

障害者区分別の控除額一覧

区分 控除額
障害者 27万円
特別障害者 40万円
同居特別障害者 75万円

<医療費控除について>
民間が運営している介護付き有料老人ホームなどの施設で支払う費用のうち、医療費控除の対象となるものは限られています。
介護付き有料老人ホームなど民間の施設では、食費や介護費、居住費は控除の対象にはならないのです。
介護付き有料老人ホームはあくまでも「介護」施設であり、「医療」施設ではないというのがその理由です。

ただし、介護付き有料老人ホームで使用したおむつ代や、訪問診療にかかる費用などは、医療費控除の対象となる場合もあります。
こうした場合には、領収書に「医療費控除対象」と書かれているので、必ず確認して確定申告時などに備えて保管しておきましょう。

介護付き有料老人ホームのメリット・デメリット

メリット

<介護・看護ケアの充実>
介護付き有料老人ホームでは24時間、介護職員が常駐しているので、夜間に具合が悪くなったときも安心です。
昼間なら、看護職員も常駐しています。
また入居中に介護度が変わった場合でも、転居の必要はなく、介護サービスを受けられるという利点があります。
高齢化が進み、慣れ親しんだ場所で最期を迎えたいという要望に応え、看取り介護に対応している介護付き有料老人ホームも多いようです。

<施設数が多く選択肢の幅が広い>
介護付き有料老人ホームは施設数が多いため、選択肢が多く、高齢者一人ひとりの身体の状態や価値観に合わせて施設を選ぶことができます。
公共施設に比べると、待機者が少ないのも特徴の一つです。
さまざまなサークル活動やレクリエーションやイベントを用意しているところや、カラオケのような娯楽設備を備えている施設もあります。
最近では医療ケアやリハビリなどのサービスが充実したホームも増えてきています。

デメリット

<選択肢が多く、施設選びに時間がかかる>
設備やサービスが多種多様で選択肢が多いということは、裏を返せば自分に合った施設を選ぶのに時間がかかってしまうという側面もあります。
介護付き有料老人ホームは施設数が多く、高級な施設もあれば低価格な施設もあり、選択肢の幅が広いです。
また、介護度が低い人、または介護をほとんど必要としない人にとっては、介護度が重い人と同じ空間で生活するような施設に入居すると、生活に不自由さを感じることがあるかもしれません。

なお、介護付きは施設数が多いので、公的施設と比べて入居しやすいことが特徴です。

<入居一時金がかかる>
介護付きは介護サービスはもちろん、ほかにも手厚いサービスを提供しているため、公共型の施設より費用が割高になってしまいます。
一生、施設で生活する権利を獲得するために、「入居一時金」を支払わなければならない施設が多く、その金額が高額になってしまうことがあります。
最近では入居一時金を無料にしている施設も多くあります。その場合、月額利用料がやや高額になるケースが多いです。

介護付き有料老人ホームとほかの施設との違い

住宅型有料老人ホームとの違い

介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違いを以下の表にまとめました。

介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違い

  介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム
入居対象者
(自立)
入居対象者
(要支援)
入居対象者
(要介護)
費用相場
(入居時費用)
0円~1,380万円 0円~380万円
費用相場
(月額利用料)
14.5~29.8万円 8.8~19.1万円
付帯サービス
(食事)
付帯サービス
(緊急時の対応)
付帯サービス
(介護サービス)

住宅型有料老人ホームは介護付き有料老人ホームとは異なり、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていません。
そのため、介護サービスの提供体制が大きく異なります。

<24時間体制の介護サービス>
介護付き有料老人ホームのような24時間体制での介護サービスを住宅型有料老人ホームで受けるには、入居者が訪問・通所の介護サービスと個別に契約して利用する必要があります。

<介護サービスを利用するときの自己負担額の計算方法>
介護付き有料老人ホームは、要介護認定ごとに定められている定額を毎月負担することになっています。
一方の住宅型有料老人ホームでは、自宅で介護サービスを受けた場合と同様、利用した分だけの負担となります。

なお、特定施設の要介護度別の自己負担額は以下の通りです。

【介護度別】特定施設入居者生活介護の自己負担額 (介護付き)

  限度額(単位) 自己負担額(30日)
要支援1 5,032 5,032円
要支援2 1万531 1万531円
要介護1 1万6,355 1万6,355円
要介護2 1万8,362 1万8,362円
要介護3 2万490 2万490円
要介護4 2万2,435 2万2,435円
要介護5 2万4,533 2万4,533円

※1単位―10円、自己負担割合1割の場合

<費用の比較>
費用面では、入居時に前払い家賃として0円~数千万円の入居一時金が発生するという点では双方とも同じです。
大きく異なるのは、介護費用の負担方法です。

介護付きは月額利用料に介護サービスの費用が含まれている
介護付きでは月額費用に介護サービスの自己負担額が定額で含まれているため、介護サービスの利用量をどれだけ増やしても、介護費用は変わりません。
その点、介護度が重い入居者も費用面での安心度は高いと言えます。

住宅型は介護サービスを使った分だけ支払う
一方、住宅型では、介護サービスを受ける場合、訪問介護や通所介護などの外部の在宅サービスを利用します。
そのため、介護費用は月額利用料の中に含まれていません。
介護サービスを利用した分だけ自己負担額を支払うことになり、介護費用はサービス利用量に応じて変動します。

要介護度認定の段階ごとに定められている支給限度額を超えて介護サービスを利用すると、介護費用が高額になる恐れがあるので注意が必要です。

<入居期間の比較>
介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームでは入居条件が少し異なるため、入居期間も変わってきます。それぞれの入居期間を確認しましょう。

介護付き有料老人ホームは終身利用が可能
介護付き有料老人ホームでは基本的に終身住み続けることができます。
ただし、入居中に長期入院が必要になるような病気を発症したときや、認知症が重度化したときの対応は施設ごとに異なるので、事前に確認しておきましょう。

介護付き有料老人ホームの場合、医療体制が十分に整い、看取りや重度ケアに対応できる施設が多いです。
そのため、身体状況が悪化しても手厚く対応してもらう事が可能です。

住宅型有料老人ホームは介護度によって変わる
住宅型有料老人ホームでは、要介護状態の入居者は外部の在宅サービスを利用しながら生活を続けます。
施設内に居宅介護支援事業所をはじめ、訪問介護事業所などを併設していることも多く、手厚い介護サービスを受けられる施設が多いです。
ただ、施設によっては重度ケアに対応できず、介護度がより重い状態になると退去しなければならないこともあります。
入居後はどのくらいの状態まで入居し続けられるのか、事前に施設側と相談することも大切です。

サービス付き高齢者向け住宅との違い

サービス付き高齢者向け住宅とは、バリアフリー設備の整った賃貸住宅で、安否確認と生活相談サービスの利用ができ、比較的自由度の高い生活ができます。
入居対象者は60歳以上の方、もしくは要介護認定を受けた方です。また、介護認定を受けていれば60歳未満の方も入居できます。
介護が必要になった場合は、外部の介護サービスを利用します。しかし、施設内で介護サービスを受けられるサービス付き高齢者向け住宅もあります。

サービス付き高齢者向け住宅と介護付き有料老人ホームの違いを以下の表にまとめました。

サービス付き高齢者向け住宅と介護付き有料老人ホームの違い

  サービス付き高齢者向け住宅 介護付き有料老人ホーム
契約方式 賃貸借契約 利用権方式
入居前の費用 10万円 30万円
共有設備 リビングなど 食堂、浴室、ロビーなど
サービス内容 安否確認、生活相談、生活支援サービス 介護サービス、医療サービス、レクリエーションなど
体験入居 あり あり

介護付き有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅では、サービス内容に大きな違いがあります。

介護付き有料老人ホームでは施設内で介護サービスを24時間いつでも利用することができ、要介護度が高い方でも安心です。

サービス付き高齢者向け住宅では、生活相談と安否確認サービスが義務付けられており、一人暮らしでも安心して生活を送ることができます。

<介護付き有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の比較>
介護付き有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、まず入居条件が異なります。介護付き有料老人ホームは65歳以上に対してサービス付き高齢者向け住宅は60歳以上です。

施設によりますが、サービス付き高齢者向け住宅は認知症の方の受け入れを不可とする場合もあります。介護付き有料老人ホームは基本的に認知症の方の入居可能な施設が多いです。

また、寝たきりや重度の介護が必要な方など、介護ケアを受ける方が入居する介護付き有料老人ホームとは違い、サービス付き高齢者向け住宅は比較的自立した方を入居対象としています。

一般型か介護型かによって介護サービスの有無が変わる
サービス付き高齢者向け住宅には介護型と一般型があります。介護型だと介護設備の体制が整っているため、施設内での介護サービスを受けられます。
しかし、施設数が全国的にみても非常に少ないので、入居するのは現実的ではないかもしれません。
一方、一般型は施設での介護サービスの提供をしていません。そのため、外部サービスを契約して利用します。
ただし、一般型は館内に訪問介護などの事業所を併設したり、施設が外部の介護サービスと提携している施設もあります。

特別養護老人ホームとの違い

特別養護老人ホームと介護付き有料老人ホームの違いを以下の表にまとめました。

特別養護老人ホームと介護付き有料老人ホームの違い

  特別養護老人ホーム 介護付き有料老人ホーム
運営法人 地方公共団体や社会福祉法人 民間企業
施設の目的 中重度の要介護者への身体介護や生活支援 介護サービスの提供や生活支援
入居基準 65歳以上、かつ要介護3以上 自立~要介護5
入居難易度 入居待ちが多く、入居まで2~3年かかることもある 比較的すぐ入居可能
月額費用 10~14.4万円 14.5~29.8万円
入居一時金 なし 多くの場合あり
介護サービス 職員から受ける 施設職員から受ける
医療 夜間は限定的 24時間の看護体制があったりと施設によりさまざま

特別養護老人ホームと介護付き有料老人ホームでは、運営法人が異なるため、費用や入居条件など様々な違いがあります。
入居予定者の現在だけでなく、5~10年後の身体状況も加味し、施設が持つ特徴やメリット・デメリットをしっかりと理解して、後悔しない施設選びをすることが大切です。

<運営母体による違い>
特別養護老人ホームは公的機関が運営しているのに対して、介護付き有料老人ホームは民間企業が運営しています。そのため、入居基準は特別養護老人ホームの方が厳しく要介護3以上の方が入居対象になっています。

公的施設の場合は、国や自治体から補助金がでるため、比較的安く利用できます。

特別養護老人ホームは入居までに時間がかかることがあるので注意
特別養護老人ホームは公的施設になるため、費用の設定が安価です。
月額利用料を抑えられるだけでなく、手厚い介護サービスの提供や終身の利用ができるといった充実したサービスを受けられるため、非常に人気があります。
そのため入居待機者が多く、入居まで3ヵ月〜数年かかるケースが多いです。即入居希望で手厚い介護サービスを受けたい方は、比較的入居しやすい介護付き有料老人ホームがおすすめです。

介護付き有料老人ホームを検討している方におすすめの施設

手厚い介護サービスを希望している場合は介護付き有料老人ホーム

入居後、手厚い介護サービスを受けたい方や終身で利用したい方は、介護付き有料老人ホームがおすすめです。
同様のサービスを受けられる特別養護老人ホームなどの公的施設と比べて、介護付き有料老人ホームは設備やレクリエーションなどが充実し、入居しやすいです。さらに、看護職員による服薬やバイタルチェックなどの医療行為、医療機関との協力体制も整っているため、急に具合が悪くなっても瞬時に対応が可能です。

介護サービス費は要介護度に応じて定額なので、要介護度が重い方でも安心して利用することができます。

必要に応じて介護サービスを利用できる住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、イベントやレクリエーションが豊富で、入居者同士のコミュニケーションを取りやすい施設です。自立や軽度の要介護度の方向けとした施設が多いため、娯楽などのアクティビティに力を入れる傾向にあります。
介護が必要になれば、外部の介護サービスを必要な分だけ利用することができます。自分の心身の状態に合った介護サービス、食事の提供や洗濯などの生活援助サービスを組み合わせられるため、充実したケアを受けられるのです。
また、利用頻度を抑えると、介護サービス費も安くなるため、月々の負担を減らせます。

介護付き有料老人ホームに関するQ&A

生活保護を受けていても入居できるか?

さまざまな控除を利用するという選択肢はありますが、生活自体が厳しい場合は生活保護を受けるという選択肢もあります。生活保護受給額で入居できる施設もあるので探してみましょう。
実際に施設を探す場合は自治体の福祉担当の窓口に問い合わせをして、ケースワーカーに相談しましょう。生活保護の条件内で入居可能な施設をスムーズに見つけられます。

介護付有料老人ホームって何?

介護付き有料老人ホームとは、食事や入浴、着替えなどの身体介護といった介護サービスから、リハビリやレクリエーションまで充実した設備が整った施設です。入居対象は65歳以上の自立〜要介護5までと幅広く、施設によっては重度の認知症の方の受け入れも可能です。

有料老人ホームはどんな人が入る?

有料老人ホームでは、60歳もしくは65歳以上を入居対象としています。住宅型は自立〜主に軽度の要介護、介護型は自立〜要介護5、健康型は自立して生活できる高齢者を対象とし、それぞれの有料老人ホームによって違います。

住宅型有料老人ホームって何ですか?

住宅型有料老人ホームとは、主に自立した人を対象とした施設です。食事・洗濯・掃除などの生活援助サービス、充実したレクリエーションが特徴的です。施設内の介護サービスはありませんが、必要に応じて外部から介護サービスを受けられます。施設内には手すりやスロープなどバリアフリーが整っています。

有料老人ホームの人員配置基準は?

介護付き有料老人ホームの人員配置基準は3:1です。要介護・要支援3人に対し、看護職員または介護職1人以上の配置が義務付けられています。住宅型・健康型では、人員基準は設けられていません。

よくある質問

介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違いとは?

自立している人や要介護度の低い人が多いのが住宅型有料老人ホームです。

介護付き有料老人ホームの多くは要介護1以上の方を対象としており、住宅型有料老人ホームは、自立~軽度の要介護度の方が対象です。どちらも民間企業が運営する施設です。

「介護付き」は介護サービスが充実していて、心身状態に応じた介護を受けながら生活できる場所で、行政から認可を受けた施設のみ運営することが許可されています。

「住宅型」は、入居者が楽しく過ごせるようにイベントやレクリエーションを提供している施設で、外部の講師を呼んだ習い事を楽しんだり、他の入居者とコミュニケーションをとったりできます。

特別養護老人ホームと介護付き有料老人ホームの違いとは?

公的に運営されているかいないかです。

特別養護老人ホームは、国や地方自治体が運営する施設で、要介護3以上の方が対象です。設備やサービス内容は一律で定められており、月額料金も国が定める「基準費用額」によって決められます。
所得に応じた安い費用で介護サービスを受けられるため、全国に入居待機者がいる人気の施設です。

介護付き有料老人ホームは民間が運営していますが、行政から「特定施設入居者生活介護の指定」を受けた施設のみ運営が許可されています。 特養よりも費用は割高ですが、介護サービスが充実している施設数が多いので、自分に合った施設を探しやすいです。

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