サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションとの比較

施設の種類 契約 設備基準 住み替えしやすさ
シニア向け分譲マンション 所有権方式 届出の義務がない 高額な頭金が必要
サービス付き高齢者向け住宅 建物賃貸借契約 設備などの基準があり、届出の義務がある 高額な初期費用が不要

シニア向け分譲マンションは文字通り、高齢者が生活しやすいように配慮された分譲マンションです。賃貸借契約で入居するサービス付き高齢者向け住宅とは契約形態が大きく異なります。

施設の種類 費用の契約方式 費用面 サービス面 魅力
シニア向け分譲マンション 所有権方式 高額な費用が必要 介護サービスは外部業者を利用 施設が充実しており資産にもなる
サービス付き高齢者向け住宅 賃貸借方式 初期費用が抑えられる 介護サービスは外部業者を利用 自由度が高い

シニア向け分譲マンションは初期費用が莫大

シニア向け分譲マンションとは、高齢者が住みやすいようなバリアフリー設計を重視して作られた分譲マンションのことを指します。
これに住む場合は所有権形式での契約となるため、数千万円以上という多額の初期費用が必要です。そのため、初期費用を抑えたい場合にはおすすめできません。
しかし、購入した物件は財産となるため、サービス付き高齢者向け住宅の場合とは異なり、家族に遺産として相続することができます。この点はシニア向け分譲マンションを選択する大きなメリットだと言えるでしょう。
ただし、入居者それぞれが所有権を得ることから、隣人にトラブルメーカーがいたとしても強制退去させるのが難しいなど、特有のリスクも存在します。

外部の介護サービスを利用する必要がある点は同じ

シニア向け分譲マンションの入居対象は、主に高齢者の富裕層です。そのため、娯楽施設やレクリエーション施設などは整備されている傾向にあります。
生活支援サービスも充実しており、かなり快適に暮らせる場合が多いです。
介護・医療サービスに関しては、基本的にサービス付き高齢者向け住宅と同様、外部のサービスを利用することになります。

サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションの違い

シニア向け分譲マンション

・分譲住宅のため初期費用が高額。
・物件のリフォームや相続・売却もできる。
・フィットネスやシアタールームなど共用設備も充実している。

サービス付き高齢者向け住宅

・賃貸契約のため初期費用が少なく住み替えがしやすい。
・バリアフリーなど高齢者が住みやすい設計。
・安否確認と生活相談に対応。

共通点

・どちらも介護サービスは別契約となる。

高齢になったときに、「現在の家では暮らしにくい」、「身体は元気だから老人ホームはまだ早い」と思う方も多くいらっしゃいます。
その場合、次の住まいの候補として、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と「シニア向け分譲マンション」などが考えられます。
両者とも、老人福祉法や介護保険法で規定される「施設」とは異なり「高齢者住宅」という種類に分類されます。
同じ高齢者向け住宅ですが、サービス付き高齢者向け住宅と分譲マンションでは、さまざまな違いがあります。

サービス付き高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンションとは?

サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションは、いずれも高齢者向けの住まいです。介護の必要がない、比較的元気な方が多く入居しています。

シニア向け分譲マンション

民間事業者が販売・運営する分譲住宅で、高齢者が利用しやすいよう手すりがあったり段差が解消されていたり、コンシェルジュが常駐するなど、様々な生活支援サービスが整っています。

サービス付き高齢者向け住宅

2011年10月「高齢者住まい法」の改正により誕生したシニア向けの賃貸住宅です。
身体機能が低下しても住みやすいようバリアフリー構造になっており、高齢者が安心して暮らしていける安否確認や生活相談といったサービスが提供されています。

サ高住とシニア向け分譲マンションの比較

建物だけ見ると違いがわからない両者ですが、サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者住まい法に基づきバリアフリー面など設備の基準設けられており、行政に届出や登録することが義務付けられています。
一方、シニア向け分譲マンションには設備基準や届け出の義務がありません。
しかし、訪問介護事業者やクリニックなどの高齢者向けサービスを提供する事業者をテナントに入れ、高齢者が生活しやすいような工夫を施しています。また、プールなどを併設したり、バリアフリー構造を強化するなど、各社で利便性を競っています。

施設の種類 契約方式 費用 設備 サービス内容
サービス付き高齢者向け住宅 建物賃貸借契約 敷金:家賃の2~5ヶ月分
月額費用:10~30万円
※管理費、水光熱費など
居室にはキッチン、洗面、トイレ、浴室共有で使用できるリビングなどあり 安否確認、生活相談生活支援(掃除、買物代行)
シニア向け分譲マンション 所有権方式 購入費:1,500万円~数億円
月額費用:10~30万円
※管理費、水光熱費修繕積立金など
一般的な分譲マンションの居室設備に加え、プール、シアタールーム、レストランなどの共有設備が充実 見守り、食事・掃除・洗濯緊急時の対応など
契約方式

サービス付き高齢者向け住宅に入居する場合は、建物賃貸借契約を結びますが、シニア向け分譲マンションは所有権方式になっています。
ここが両者の大きな違いと言えるでしょう。
シニア向け分譲マンションは売却や賃貸することが可能ですし、所有者が亡くなった後は、相続財産の1つとなります。
ただし、将来的に介護付有料老人ホームなどへの住み替えを視野に入れた場合、思うように売却が出来ない可能性や、売却代金が購入費を下回る可能性もありますので、購入時は立地条件や建築年数などを十分に検討する必要があります。
サービス付き高齢者向け住宅は賃貸のため、相続財産としては残りませんが、住み替えは比較的しやすいと言えます。
両者とも、介護サービスは契約に含まれておらず、必要な場合は利用者本人が介護事業所と別途契約することになります。

費用

サービス付き高齢者向け住宅の入居時には敷金が必要で、家賃の2~5ヶ月分が一般的です。
月々の費用の内訳は一般の賃貸住宅と同じように、家賃、管理費、食費、水光熱費など。
介護サービスを利用する方は、別途介護保険の1割(収入により2割~3割)負担が必要です。
シニア向け分譲マンションへ入居するには、そのマンションの購入費用が必要です。
一般の住宅のように、住宅ローンの利用が出来ます。月々の費用としては、食費や水光熱費、修繕積立費や管理費。
そして、毎年の固定資産税支払いも必要です。食事の提供や介護サービスなどを利用した際には、別途費用がかかります。
どちらの住宅でも、「居住費」「管理費」「食費」「水光熱費」などの費用は大きく変わりません。
しかし、パンフレット等に書かれている月額費用に含まれているサービス内容は、物件ごとに異なります。
また、高齢者の多様化するニーズに個別対応するために、基本的なサービスに加えてオプションサービスを用意しています。

設備

サービス付き高齢者向け住宅は、前述したとおり設備基準が明確に定められており、専有部分の床面積が25㎡以上(共用部に十分な広さと機能を持つ浴室や食堂がある場合は18㎡以上)であることや、台所、水洗トイレ、収納設備、浴室が設置されていることが規定されています。
シニア向け分譲マンションに面積や設備について法的な規制はありませんが、一般の分譲マンションと同様、専有部に台所・水洗トイレ・収納設備・浴室が備えられています。
各住戸は、段差の解消や広い廊下幅の採用、手すりやベンチの設置がなされています。
共用部分はレストランや大浴場、プールなど充実した施設を備えるなど、高齢者が暮らしやすいように特徴を出しています。

サービス内容

サービス付き高齢者向け住宅では規定された最低限のサービスとして、「安否確認」と「生活相談」が提供されています。
その他、掃除や洗濯、買い物代行といった生活支援サービスもところによっては提供されています。
また、夜間はスタッフが不在になるところもありますが、警備会社と提携することで、緊急時に駆けつけるといった対応が取られます。
シニア向け分譲マンションでは、規定はありませんが、清掃サービスや宅配便の取り次ぎ、専任コンシェルジュによる日常生活のサポートを独自のサービスとして導入しているところは多いようです。
また、医療機関、介護事業所がテナントとして同じ建物内に入っており、緊急時にスムーズに対応できる体制をとっているところもあります。
どちらの場合も、介護サービスや医療などのサービスは必要に応じて自分で外部の事業所を選択し契約しなければなりません。
契約時には、どのような独自サービスが提供されているのか、そしてそれらのサービスが有償か無償か、という点を細かくご自身で確認することが必要です。

サ高住とシニア向け分譲マンションそれぞれのメリット・デメリット

施設の種類 メリット デメリット
サービス付き高齢者向け住宅 ・高額な初期費用がなく住み替えがしやすい ・施設によりサービス内容が異なる
・入居者同士の交流が少ないところも
シニア向け分譲マンション ・サークル活動など入居者同士の交流も盛ん
・賃貸物件として貸すことができる
・売却やリフォームも自由
・固定資産税等がかかる
・物件の数が少ない

これらのメリット・デメリットを踏まえて、ご自身に合う施設を選ぶことをおすすめします。

まとめ

これまでの生活スタイルをあまり変化させずに暮らすという点では、サービス付き高齢者向け住宅もシニア向け分譲マンションも同じです。
しかし要介護状態になった場合は、別途外部の介護事業所と契約して訪問介護や訪問看護サービスを利用する必要があります。さらに身体状態が寝たきりになるなどの重度化すると、どちらも老人ホームなどの介護施設に移らざるを得ない可能性も出てきます。
また、そのまま住み続けたとしても、介護サービスや生活支援サービスの費用が身体状態の悪化に合わせ高額になっていくなど、当初想定していたような暮らしが難しくなるかもしれません。
サービス付き高齢者向け住宅とシニア向け分譲マンションの大きな違いは、所有財産になるかならないかです。老後の資金計画に合わせ、専門家に相談しながら焦らず検討されることをお勧めします。

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